欠片ほどの

 

おおむね晴れ。18度。

7時に起きる。

朝餉は、金時豆煮、キュウリとカニカマの酢の物、お新香、おろした長芋、大根と人参・ごぼう天・竹輪の煮物、豚コマの生姜焼き、味噌汁(大根の葉・人参・玉ねぎ・豆腐・白菜)、コーン混ぜご飯、柿・キウイ・リンゴのヨーグルト掛け、番茶。

食事中に母が、ボソッと言う。僕の妻が一人で寂しかろうと。

NHKの将棋と囲碁トーナメント。母も見入っている。囲碁に興味がありそう。計算好きの血が共鳴しているのか。

未知の物事への、そこはかとない憧れ――その血は母から受け継いだのかもしれない。

母の耳が遠くなければ、と思う。互いに、話す前にどこかで諦めているふしがある。補聴器でも、僕の声は聞きにくいのかもしれない。

昼餉は、朝の残り物、炊いたばかりの栗ご飯、番茶。

買い出しへ。段ボール3箱分の食料。2人の食欲にはかなわない。

18で家を出てから、家族らしい時間を過ごしてこなかった。母も姉も、思い出は消えつつある。こちらもそうだ。母とどんな日々を送っていたのか。なぜか、すっぽり抜け落ちている。たとえば、どんな料理を作ってもらっていたのか。手料理はなにが好きだったのか。こちらへ来ると、掘り返そうとして果たせない。寂しいとか、そういうことはない。

ただ、思い出せないことが不思議でならない。

夕餉は、バターと蜂蜜を塗ったトースト、ミルク。母と姉はマグロの刺身、筋子、大根の煮物、栗ご飯。

忘れているのか、そもそも何もないのか。

僕は非協力的な存在だった。それだけは言える。