説明は死んでもするな

 

 

 

 

晴れ。18度。
7時に起きる。
朝餉は、蜂蜜とヨーグルトをかけたバナナ、サラダ(サニーレタス・キャベツ・大豆煮・大根・チーズ・バジル)、目玉焼きとハム、味噌汁(菜の花・油揚げ・豆腐・玉葱・人参)、トースト、アールグレイ。食後にコーヒー。
マッカーシー著『通り過ぎゆく者』より抜粋——

 我々が量子の世界を充分に理解できないのは人間が量子レベルの世界で進化してきたのではないからだという考え方はいいとしよう。本当の謎はダーウィンを悩ませた例の問題だ。なぜ人間は生き延びるのに役立つわけでもない難解な事柄を理解するようになったのか。ディラックやパウリやハイゼンベルクといった量子力学の創始者たちは世界はこうなっているはずという直感以外のいかなる導きの糸もなしに理論を考え出した。存在していることすらほとんど知られていないスケールで探究を始めた。幽霊のような異常を出発点に。なんだこれは。ああただのアノマリーだ。アノマリーだって? そう。ううむ。そんな馬鹿な。アインシュタインはボルツマンといっしょに仕事をしたことがあるのかな。
 知らないですね。アインシュタインがボルツマンから得たのは熱力学の法則はあるスケールでは成立しないかもしれないという普通に持ち得る疑いでした。

マッカーシーが小説でこういう知見を披瀝して死んでいったことが大きな驚きだ。この会話はずっと続いていく。それは大雑把な内容で、深くも浅くもなく、ただ文字として流れていく。発見も確認もない。披瀝しているだけだ。それは主人公の造形にさえなっていない。
昼餉は、中華スープ、焼きそば、ルイボスティー。
妻と買い物がてらに散歩へ。いつもの公園は吹いてくる風に桜の花が盛大に散っている。テーブルに座って米粉のパン屋で求めたパンをルイボスティーで。近くの中学校の生徒たちが、そこここで語らっている。クラス替えでもあったろうか。
まだはじまってもいない人生について、キミたちが語ることはそう多くはない。すべてに反抗することでしか衝動を収められない季節。
夕餉は、冷奴、納豆、ヒジキ煮、餃子、味噌汁(菜の花・油揚げ・豆腐・玉葱・人参)、玄米ご飯、赤ワイン、ウィスキー・オンザロック。食後にコーヒー、クッキー。
腕時計が壊れる。自動巻きをつかさどるローターからなにかが挟まったような音。裏蓋のガラス越しに見えているローターが回らなくなる。義父の腕時計をオーバーホールする時期がさらに先送りになりそうだ。