文字のまだなかった頃の

 

 

 

 

 

 

晴れ。8度。

7時に起きる。

朝餉は、蜂蜜とヨーグルトをかけたバナナ、キャベツと大根のサラダ、目玉焼き、味噌汁(ネギ・大根・玉葱・人参・油揚げ・豆腐)、トースト。食後にコーヒー。

本が届く。太安万侶著、福永武彦作『古事記物語』(世界少年文庫)。

言わずと知れたこの国最古の書物。口承で伝えてきた物語(系図・神話・伝説など)は、天武天皇が稗田阿礼に命じて覚えさせた。この国にはまだ文字がなかった(と言われている)。

稗田阿礼は物覚えが良く、物語を片っ端から頭に入れていった。それを文字に興すよう命じたのが第43代の元明天皇で、命じられたのが太安万侶だ。太安万侶は、稗田阿礼から聞いた物語から、確かだと思えるものを選んで年代順に並べて書物とした。 

712年(和銅5年)、こうして『古事記』は生まれた。

というあらましを太安万侶が『古事記』の序に書いている。スサノオノミコトのヤマタノオロチ退治とか因幡の白ウサギ、海幸と山幸といった物語は『古事記』によってカタチを与えられ、僕らの物語として生き続けている。

夕餉は、漬物、佃煮、黒豆煮、伊達巻き、筑前煮、味噌汁(大根・玉葱・人参・ネギ・油揚げ・豆腐)、玄米ご飯、赤ワイン。食後に花林糖、焙じ茶。

僕らの暮らしに文字が生まれてわずか1300年ほど。『古事記』は中国から伝えられた漢字によって書かれているように見えて、実は話し言葉の躍動は漢字に当てはめたような部分が多々ある。僕らの先祖が話していた言葉のいぶきは、漢語ではとても表現しきれなかった。太安万侶の当て字は、その躍動を今に伝える唯一の言葉だと言われている。