彼が見通す未来

 

 

 

 

 

 

晴れたり曇ったり。30度。

6時に起きる。

豆乳。

「世界最小・最軽量」という惹句に踊っていたのは、20世紀までのこと。

今、そんな謳い文句で売れるモノはほんの一握りだ。モノに求める要件は「速さ」とか「静かさ」「省エネ」とかを経て、「SDGs」になった。社会的な俯瞰とか、世界規模の視点のないモノづくりはもはや認められない。そうはいっても、まだまだ曖昧模糊としているのだ。

SDGsに掲げられた17の目標のうち、最初に掲出されている貧困や飢餓をなくすという目標は、100億人に近づきつつある人口爆発に対して、もっとも要請される解決策だと言われている。

一方で、すでに人口爆発している現状で取りうることは限られているのも事実だ。食物への要請は特にハードルが高い。

昼餉は、パウンドケーキ、冷奴、スパゲッティ・ナポリタン、アイスコーヒー。

ジョギング、8.24キロメートル。

米国マクドナルドのフレンチフライに供せられるジャガイモをどこで作っているのか、報道機関のNBCが調べた。

すると、ワシントン州の大農場であることがわかった。農場主は、ビル・ゲイツだったというのだ。その農場にとどまらず、ビル・ゲイツは農地を買いまくって、いつの間にか、米国一の農場主になっていた。

彼が土地に賭けているのは、驚くことではない。だが、直接の所有者になるというのは、ちょっと違う。彼が見通しているのは、ほんの十数年先だ。

SDGsは目標どおりにはいかず、食料供給が間に合わなくなると、ビル・ゲイツはわかっている。貧困も飢餓もなくならない。だから、農地を買い漁る。それがいちばん手堅い投資だとわかっている。地主になって、自然農法をやらせるというようなことはしない。農薬をじゃぶじゃぶ使うことがSDGsに逸脱するとしても、彼はやらない。行く末はすでに見えている。

夕餉は、冷奴、切り干し大根、味噌汁(玉ねぎ・人参・油揚げ・豆腐・ネギ)、カレーライスの残り、冷たいほうじ茶、ウイスキーオンザロック。

ちなみにビル・ゲイツは、農地取得が温暖化や環境に対するアプローチなのか尋ねられて、無関係だと答えている。農地取得は、彼の投資グループがやっていることで、気候とは関係ないという。

このこととは別に、ビル・ゲイツは種苗の会社も所有している。そこで作られるたとえば小麦の種は、翌年の種を実らせない1年限りの品種と言われている。