妖精の舌打ち

 

 

 

 

 

雨。22度。

6時に起きる。

冷たいほうじ茶、コーヒー。

 

 

昼餉は、とうもろこし、ポテトサラダを挟んだ米粉ロールパン、豆乳。

妻は、コロナワクチンの1回目を接種しに駅近くの病院へ。

美容院へ。刈り上げて、梳いてもらう。

 

オードリー・ヘップバーンのサブリナカットでお願いします。

 

——言ってみたい……

詰まるところ、僕が頼んでいるカットを一言で言いあらわすなら、そういうことだから。

なぜか、美容師は気づかない。いや、彼女や彼らは、気づかないよう努めている。

カットが終わって、鏡に映る客の風情を観察してみたまえ。そこに映っているのは、まごうことなきあの妖精ではないか。

舌打ちしたくなる、若干の忸怩とともに、僕は店を出る。

夕餉は、冷奴、焼きそば、とうもろこし、チューハイ、冷たいほうじ茶。

車椅子テニスの女子の決勝を見る。3位決定戦がフルセットの戦いになって、決勝は9時過ぎの開始。

「あれは、グラフだね」

妻は、対戦が始まってすぐ、そう言った。

世界ランク2位の上地結衣さんの相手、D・デ フロートのことを’80年代を席巻した女王になぞらえた。

フロートは、ゴールデンスラムを目前にして戦っている。

妻はそのことを知らない。彼女の佇まいにシュテフィ・グラフを重ねたのは、偶然の一致ではあるまい。

 

 

 

 

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