牢獄と気流

 

 

 

 

 

雨。21度。

6時に起きる。

冷たいほうじ茶、コーヒー。

涼しいというより肌寒い空気が流れ込む。

部屋の隅っこに隠れていた暑気が、居場所を失っていく。

近所のどこかで削岩機を動かすような音。終日鳴り響いて、なにも手につかず。

昼餉は、お茶漬け味のオートミール、リンゴジャムをはさんだ米粉のロールパン、ナス・トマト・ウインナーソーセージのスパゲッティ・ナポリタン、ほうじ茶、コーヒー。

体という牢獄につながれている——たまに、そんなことを意識する。

僕らの背中についている翼はとても大きくて、とても軽い。ちょっと動かすだけで、体は重力をあざ笑うかのようにふわりと浮く。

翼の付け根が、体のどこにもつながっていないように感じる。

いったん浮いたら、どこまでも上昇して気付けば雲の上に出ている。かたわらをものすごい勢いで流れているのは、世界を覆っているジェット気流だろうか。

それに身を任せて、世界を何周かしてみる。

半透明の球体があっちこっちに見える。おなじようにして気流に身を任せているヒトたちの核だろうか。体を持たないことが、僕らに平穏をもたらしている。

そうやって小一時間も浮かんでいると、もとへ戻ることの煩わしささえどこかへ消えている。

夕餉は、冷奴、トマト・キュウリ・ポテトサラダ、麻婆茄子、味噌汁(玉葱・人参・豆腐・油揚げ・ネギ)、ご飯、チューハイ、冷たいほうじ茶。