遠吠えの満月

 

 

 

おおむね晴れ。31度。

6時に起きる。

ほうじ茶、アイスコーヒー。

オリンピックの競技が始まっている。

初戦で敗れ、その足で国へ帰る選手がいる。

輝けるほんの一瞬を過ごして。

空港と選手村、それにスタジアムと競技場——目に映ったこの国の風景を、どんなみやげ話にするのだろう。

この国の匂いを、その鼻は深く吸い込んでいるだろうか。肌は、陽射しに焼けて幾ばくかの色を残しただろうか。

タラップを降り立った祖国は涼しいのか、それとももっと灼けついているのか。

待っているのは、どんな暮らし向きなのだろう。

昼餉は、オレンジマーマレードを塗った全粒粉パン、ミルク、アイスコーヒー。

妻からの写真に写っているのは、10秒しか鳴かない蝉。出し惜しみしているかのように鳴く、エコ蝉。網戸にへばりついて、そのまま絶命したように動かないので、妻が内側から突いてみたら、飛び立ったという。鳴かなかったのは、メスだったからかしら、と。

もう1枚は、ひまわりの葉裏でひとごこちのアマガエル。四肢ができたばかりのよう。

義兄の菜園は、都市計画ばりのプランに基づいて野菜も花々も粛々と育っている。人柄がそんなわかりやすく出ている畑はほかにあるのだろうか。

夕餉は、冷奴、トマト・キュウリのサラダ、納豆、ズッキーニ・玉葱・ウインナーソーセージの中華炒め、味噌汁(玉葱・人参・油揚げ・豆腐・小松菜)、玄米ご飯、冷たいほうじ茶、アイスコーヒー。

妻とビデオ会議。

今夜は、満月。薄雲の向こうに、月光。

同じ月を、祖国に帰ったオリンピアンも見上げているだろうか。

 

 

 

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