ジェフ・べゾスのほくそ笑み

 

晴れ、のち曇り。26度。

7時に起きる。

朝餉は、グリーンレタス・大根・キャベツ・カニカマのサラダ、目玉焼き・ウインナーソーセージ、味噌汁(人参・玉葱・シメジ・油揚げ・豆腐・大根の葉)、トースト、紅茶。食後にコーヒー。

ビッグデータの一部として扱われている——僕らは、ダイレクトメール(もちろん電子のだ)を見てそう感じる。それは数日前に検索したモノから、数ヶ月前に買ったモノまで脈絡なく並んだリストである。

長さ180センチ、幅60センチ、厚さ3センチの桐の集成材に興味があったのは2ヶ月前だ。それに続いて、やけに持ち手の長いドイツ製のピーラーとか、ヘンプで織った無骨な作業ズボンとか、電動歯ブラシの偽物の替えブラシセットとか、中古の凸版印刷機の入門セットとか、バスキアの蕎麦猪口とかが並んでいる。いったい、どんなリストなんだと薄気味悪くなる。

自分のリストを見せられて、そう思わないヒトはいないだろう。それらがたった一人から紡がれたモノとは信じられない。どんな人物像が浮かび上がるのか、コンピュータに聞いてみたい。

その理路整然とした説明を聞かされて、僕らは感心するのだろうか。

要するにコンピュータは、薄気味悪くなったり、驚いたり、信じられなくなったり、感心したりはしない。

脈絡がないようでも、コンピュータは関連を見つけ出し、消費の性向として何かをつかむ。それをリストにして送りつけてくる。

僕らは、送りつけてきた存在にも、それを受け取った存在にも、狂気を見る。

ジョギング、9.23キロ。夏一番と呼びたい風は、南風。

昼餉は、ミックスナッツ、ポテトチップス、コーヒー。

あと数年したら、ベランダに宅急便のドローンが降りてくる。お届けモノです、とドローンが言う。箱を開けると、サンショウウオの生態図鑑が入っている。買った覚えはないぞ。まったく、世も末だな。

引き取りの依頼をしようとして、ふっと思い出す。サンショウウオが気になっていたことを。誰だって、一生に一度はサンショウウオのことが気になる日がやってくる。

コンピュータは、そのトリガーを引いたまでのことだ。

需要を喚起されて、そのことに気づく——僕らに届くのは、予測に基づいた注文だったりする。

夕餉は、納豆、大根・カボチャの煮物、アジフライ、味噌汁(人参・玉葱・大根の葉・シメジ・油揚げ・豆腐)、ご飯、赤ワイン。

 

 

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