風に吹かれて

 

 


雪、のち晴れ。5度。
7時に起きる。
朝餉は、蜂蜜とヨーグルトをかけたバナナ、卵とじの煮物(ハム・キャベツ・ほうれん草・玉葱・人参・カニカマ)、味噌汁(玉葱・人参・油揚げ・豆腐・小松菜)、ブルーベリージャムのトースト、アールグレイ。食後にコーヒー。

ジョン・ル・カレ『地下道の鳩』より——

 情報部は言い返さないと書いたが、スパイ機関がこれほど国内メディアに甘やかされている国は、西半球のどこにもないと思う。彼らが職務に精通していることは、言いわけにはならない。自主規制にしろ、不明確で厳格な法律にもとづくにしろ、わが国に存在する検閲体制や、適法性が疑われる全面的な監視体制にイギリス国民がうまくなじみ、こぞって服従する現状は、自由世界か不自由世界かを問わず、あらゆる地域にいるスパイの羨望の的である。
 情報部に晴れ着を着せて褒めたたえた、元職員たちによる数多の“公認”回顧録に言及するのも得策ではない。より悪質な行為に赦しのベールをかけた“公式記録”も同様だ。私がモーリス・オールドフィールドとともにした食事よりずっと快適な昼食会から生まれ、全国版の新聞に掲載された無数の捏造記事に触れても意味はない。
 いっそ怒れる友人にこう指摘してみてはどうだろう。プロのスパイを残りの私たちと同じようにあやまちを犯しがちな人間として描く作家は、慎ましく社会に奉仕しているだけでなく、民主的な役割すら果たしているのだと。なぜなら、良かれ悪しかれ、いまだにこの国の政治的、社会的、産業的エリートの心のふるさとであるイギリス秘密情報部の実情を世に知らせているのだから。

この文章の根底に息づくウイットは、ただそう語りたいだけの刹那を多少なりともはらんでいる。それがイギリスの上流階級の知識人であることの表明にさえなっている。いかんともし難いのだ。今日のイスラエルの混迷は、もとをただせば大英帝国の植民地政策(という高尚なものではないと思うけれど)に端を発している。それをかいつまんで表現すれば、当事者意識の不在ということかと思う。知識人は集団無気力に陥りやすい。それがウィットを生んでいる。英国の上流階級はこの点において端的だと思う。
昼餉は、卵でとじた煮麺、コーヒー。
妻と長浜へ。伊吹山から吹き下ろす風が身を切るようだ。クルマを駐めて散歩。
夕餉は、鶏ひき肉の団子・白菜・豆腐のキムチ味の常夜鍋(残りの出汁でオジヤ)、赤ワイン。食後にチョコレート。