魔がさすこと

 

 

 

 

 

 

 

 

 

雪、のち雨。3度。

7時に起きる。

朝餉は、蜂蜜とヨーグルトをかけたバナナ、キャベツ・大根・ひよこ豆・カニカマ・竹輪のサラダ、味噌汁(大根・玉葱・シメジ・人参・レンコン・油揚げ・豆腐・白菜)、卵サンドイッチ、アールグレイ。食後にジンジャー・ターメリックティー。

ミゾレがすぐ雪へ。しんしんと積もる。

冷蔵庫の扉が壊れた。ボタンを押すと開く扉には、コイル型のバネが大事な役目を担っていた。折れたバネの働きはなんとなくわかり、幸いなことに、ヨドバシカメラのWebで在庫が見つかった。

一安心してから、13年目にして折れたコイル・バネの日々を労ってやる。

それにつけてもヨドバシの腰の座りよう。1グラムに満たないバネ1個の在庫から、商いへの思い定めが伝わる。

凡百の宣伝文句はもちろん大事かもしれない、その在庫をすぐ送ってよこすのは、知らしめることさらに数多と思う。地味であればこその、まさに地道ではある。

妻の作った昼餉は、シナモントースト、クリームシチュー、シンジャー・ターメリックティー。

雪、降り続く。

辻邦夫著『西行花伝』(新潮文庫)より抜粋――

 

「では、本当に正しいことなど存在しないと……」

「この世では、そう思い取ったほうがいいかもしれません。すくなくとも、そのほうが、生きる勇気が出ます」

「どうしてでしょうか。私は正しいことが世に現れてほしいと思います」

「この世には人々がいるだけ、それだけ公正な生き方があるのです。すべての人は自分が正しく生きていると思っています。それをどう塩梅し、より広い人たちが安堵を得るかが大事です」

(中略)

「でも、そう考えなければならないとしたら、私は何をたよりに生きていったらいいのか分かりません。誰が何をしたって正しいことになるわけですから」

「その通りです」

「では、何をしてもよろしいのでしょうか」

「いいでしょう。ただしその際、正しいことをしていると思ったり、そう言ったりすべきではないでしょうね。むしろそんなものはないと思い定めるべきですから。あなたも何が正しいかで苦しんでおられる。しかしそんなものは初めからないのです。いや、そんなものは棄てたほうがいいのです。正しいことなんかできないと思ったほうがいいかもしれません(後略)」

 

夕餉は、おでん、いなり寿司、おはぎ、赤ワイン。食後に甘栗、白湯。

正しいことはわかっていても、気づくと悪いことをすこしはたらいている。誰もがわかるのは、こちらかもしれない。