その瞬間が……

 

 

 

 

 

晴れたり、曇ったり。34度。

6時に起きる。

冷たいほうじ茶。コーヒー。

そうそう、そんな感じだ——

と、何かに対面するたび思っている。たぶん、自分でも気づかないままやっている。

月を見上げて、雲間に見え隠れしているときの月の見えなさ加減に、そう思う。

ちょっと古いクルマの塗装が剥げかかっていて、持ち主の物悲しさが、ヌメっとこちらに入り込んでくる、とそう思う。

Spotifyが今日のおすすめです、と選んでくれた音楽にふっと気づいて、どうしたわけか騙されたような気になる、とそう思う。

淹れたてのコーヒーが、少し時間が経って、思ってもみなかったところへ出かけて、また帰ってきたような味になっている、そんな頃合いに、そう思う。

襟口が伸びきってしまって、そのだらしなさより、着心地の良さに混じるのがふしだらさなのだわかる、とそう思う。

そんな、言葉にしてみてもあまり伝わらない、ズレや綻びや凹みに出会うのは、なぜなのだろう。

昼餉は、干し葡萄、シリアル、リンゴジャムを塗った全粒粉パン、ミルク、コーヒー。

彦根の近江高校がサヨナラ勝ち。インタビューで監督が嗚咽を呑み込む。県大会の前、負け癖のついた3年生たちを前にして、やり切れない不甲斐なさから「ユニフォームを脱いでくれ」と申し渡したとき、3年生のキャプテンが、監督と生徒のあいだを取り持って繋ぎ合わせてくれた。

試合前に後攻めを選び取り、最後のバッターとなっては右中間にヒットを打ったその3年生の名前を口にして、監督は涙を堪えた。いつの間にか、生徒たちの方が先を走っていた。そのことに気づいた瞬間だった。

夕餉は、トマト・キュウリのサラダ、冷奴、ソーセージ・目玉焼き、ご飯、冷たいほうじ茶、ウイスキーオンザロック。

妻とビデオ会話。

大きなあくびをしたと思ったら、船を漕いでいる妻。

 

 

 

 

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