デトロイトの三〇年


くもり、のち風雨。
台風が四国に上陸してそのまま関西を北上して日本海へ抜ける。
雨は夕方までにあがるも、風は夜半まで吹く。女房の実家も無事だったよし。
映画を観る。マーティン・ブレスト監督「ビバリーヒルズ・コップ」。公開されてからちょうど三〇年になる。
八〇年代といえば、世界が疲弊する手前で、なにかを夢見ていた最後のころだ。録画したこのコメディ映画を僕は繰り返し観ては仕事のうっぷんを晴らしていた覚えがある。なんだか久しぶりに観て、ちょっと驚いた。すっかり忘れていたシーンが冒頭に流れて、それを大した感慨もなく当時は観ていたことを思いだした。主演のエディ・マーフィが住むデトロイトは日本の自動車産業に打ちのめされて、当時から街角はすさみ、住む人びとも疲れ果てていたのだ。その様子がずっと映し出されて、そんな汚い街に住むはみ出し刑事という主役の素性をうまく描いていたのだ。同時に、それはよくできたドキュメンタリーのように短い時間にもかかわらず街に澱む空気をあらわしていた。映画の冒頭シーンとしてはとても優れていたことに今になって気づいた。
ちょうど三〇年たって、日本のふつうの地方都市も当時のデトロイトと変わらなくなった。商店は錆びついて、たまに歩いているのは年寄りばかりで、輝く未来などどこを探しても見つからない。
今のデトロイトは、その後も荒廃がすすんで、惨めな都市番付なるもので一位になり、去年に財政破綻している。三〇年というもの、じょじょにひどくなっていったのだから(あれ以上のひどさが想像できないくらいだが)、日本の地方都市もこれからもっとすさんでいくのは想像に難くない。