恥ずかしげな音

晴れ、のちくもり。
脈絡のない、細切れの夢をたくさん見る。
六時前に起きて、机へ。
午後、十一キロをジョグ。
昨日からやんわりと断食をしている。昨夜は味噌汁だけ。
躰の部位を総動員させて、感覚を研ぎ澄ませたい。春なのだし、とわけもなく思う。
食べないと、調子は目に見えていい。
アレクサンドル・タローが奏でるエリック・サティーは、みなまで言うなと作曲家と演奏家が二人して囁きあっている。
フランス人の問わず語りは、いつも残酷な告白のようだ。それは静かでモノトーンのちょっと皺の寄った布地をまとっている。
カフェの客の邪魔にならないように、生前のサティーはたっぷり時間をかけて息を吸いこんでから鍵盤に指を添えていた(音がそんなふうに聞こえてくる)。時たま、驚かせるような音を出しては、数多の告白が嘘だらけだということを客たちに気づかせた。
だからタローは、ちょっと恥ずかしげな音を出している。フランス人同士は、音楽の世界でもどこか密やかだが、互いのことを聞き上手だとは思っていないふしがある。そこがいい。