世間の道理を諭されて

曇りのち雨。
五時過ぎに起きて、机へ。
朝、女房とクルマで東北自動車道を北へ。
那須に来ている。
雲に沈んでいる茶臼岳の裾野からロープウェイまで行こうとして、あまりの濃霧にあきらめた。あれは、雲の中だったのだ。
投宿して、露天風呂に浸かっていると、森の樹々が雨に打たれて騒々しい。
ホトトギスとウグイスが鳴き交わす。贋物と本物の饗宴。贋物のほうが声に色艶がのっている。
こちらのアジサイは真っ白いものは、どこまでも真っ白い。青いのが堂々と青いように。それに、桂の木の幼葉が遠目に赤い花の咲いたように見える。
二人の幼い子どもを連れた父親が風呂に入ってくる。
「来年は、パパといっしょには入れないね」
「どうして?」
「女の子はママと入らないとね」
長女とはいえ、せいぜい四歳か五歳くらいの子に父親がそう言っている。年下の男の子は、黙ってその話を聞いている。
パパは切なかろう。