根っこがうったえている現状のこと

 

 

 

曇り、ときどき日差し。30度。
7時に起きる。
朝餉は、蜂蜜とヨーグルトをかけたオールブラン、サラダ(レタス・キャベツ・トマト・ポテトサラダ・バジル・カニカマ)、味噌汁(ナメコ・小松菜・豆腐・油揚・玉葱・人参)、卵トーストサンドイッチ、アールグレイ。食後にコーヒー。
ベランダで陽射しと格闘しているはずの万年青が息もたえだえという。妻がくぐもった声で、もうダメかもしれないねと言う。それまで万年青のことでぼくが気にかけていたのは、せいぜい直射日光を避け、根のまわりに空気を送ることくらいだった。万年青はいつのまにか葉っぱが白茶けていた。もっと過酷な米原で生き抜いてきたのではなかったか、と内心で語りかけながら小さな鉢に植え替えて、書斎のガラス壁に面した机にその鉢を置いた。根っこはもうしわけほどに伸びており、どこか違う場所へ引っ越そうと支度しているかのようだった。
昼餉は、菓子パン、アイスコーヒー、ルイボスティー。
業者が訪う。米原から持ってきたエアコンの寝室への設置。ほかにもこまごました手入れは残っているものの、家の大きな交換はひと区切り。
『Paris Reviewインタビュー』よりボルヘスへのインタビューから——

——小説を書いてらしたときは、たくさん直されましたか?
ボルヘス 最初の頃はそうでした。そのうち、人間、ある年齢に達すると、それなりに自分のトーンを見つけるようになる、と気がつきましてね。いまは、書いてから二週間くらいたってから見直すくらいです。間違いや繰り返しはもちろんたくさんあって、それは直さなくちゃいけない。また、お気に入りの癖も程々にしなくてはいけない。でも、最近は、自分の書くものはあるレベルのところにつねにあって、それ以上良くもならなければ悪くもならない、と思うようになりました。したがって、放っておきます、忘れることにしてます、で、いまやってることだけを考えるようにしてる。

インタビューのとき、ボルヘスは90歳だった。目はあまり見えていなかったらしい。
夕餉は、冷奴、ポテトサラダ、ヒジキ煮、ナスの煮浸し、味噌汁(ナメコ・油揚げ・豆腐・小松菜)、鶏ひき肉と夏野菜のドライカレー、ウィスキー・オンザロック。食後にコーヒー、
机の万年青がひと息ついているように見える。