気高さとの邂逅

 

 

 

 

 

 

 

おおむね晴れ。19度。

7時に起きる。

この時期に着ていた服が見当たらない。というよりも、どんな服を着ていたのか思い出せない。僕を見る妻の目が灰色になっていく。

朝餉は、味噌汁(ジャガイモ・人参・玉葱・ワカメ)、フレンチトースト、コーヒー。

「アフリカの日々」より——

 

ハンブルクで老ハーゲンベックに会った時、彼が言ったことを思いだす。肉食獣をふくめたあらゆる動物のなかで、いちばん気を許せないのは鹿なのだという。ヒョウのほうがまだ信頼がおける。だが、若い鹿を信じても無駄なことで、おそかれ早かれ、そいつは後ろからおそいかかってくるだろうと、彼は話してくれた。

 

このあとに続く、若い雌鹿のルルとの思い出を綴った文章ほど美しいものはない。それは、筆者であるディネセンの己へ向ける眼差しとどこかで交錯している。そんな想像をするのは僕くらいかもしれないけれど。

昼餉は、ナッツ、コーヒー。

立派な雌鹿となったルルが、再会に訪れる描写——

 

 森に帰ったルルには威厳がそなわり、立派にひとりだちしていた。心のもちかたが変わり、今や落ちつきはらっていた。王位を要求して亡命を余儀なくされている若い王女と知りあった人が、後年権利を回復して王位につき、権勢にみちた彼女と再会する——私とルルとの再会は、まさにそんなふうだった。フランス王となったからには、オルレアン公時代の自分の不平不満は記憶にとどめないと宣言したルイ・フィリップ王にひけをとらないほど、ルルには卑小さのかけらもなかった。ルルはいまや完全にあるがままの自分となった。(中略)ルルはしばらく私を見つめていた。その紫がかった眼はまったく無表情で、またたきもしない。神々は決してまたたきしないという。私は牛の眼をもつ女神ヘラと対面している思いだった。

 

ディネセンが雌鹿の神々しさにまことの神を見たのは、どこかで僕らのアニミズムに通じている。だがそれも一瞬のことで、彼女はすぐ女神ヘラを呼び寄せてしまう。僕らは、神をほかの神に置換しない。

ウイスキーを求める。Teacher’s Highland Cream

夕餉は、鯖の塩焼き、味噌汁(大根・人参・玉葱・カボチャ・ネギ)、玄米ご飯、ウイスキーオンザロック。食後にナッツ。

 

 

 

 

 

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