柿取り

晴れときどき曇り。
七時過ぎに起きる。
朝餉は、マカロニサラダ、味噌汁(大根、人参、冬瓜、油揚げ、エノキ、長葱)、林檎パン、ルイボスティ。食後に柿の羊羹。
入り側書斎でキーを叩く。
注文しておいたテレビ電波の分配器が届く。ずっと埃をかぶっていたテレビを義母のホームから持ち帰って台所に置いた。CATVからの配線に三つ叉が必要になった。彦根のホームセンターで1680円の3分配器が、Amazonでは380円。送料さえかからない、ぽっきりだ。モノの値段は、単純に喜べないところまで追い込まれているし、それを届ける人の仕事は限りなく安い。この状態が良いわけがない。
一人の老婆を介護する人数で、この国の惨状がわかる。何も生み出さない労働を支えているのはその多くが税金だ。介護する側もされる側も、出口が見えずにいる。団塊の世代がこれから介護される側にまわる。その時、3分配器はいくらになっているだろう。
昼餉は、スパゲッティ・ナポリタンとルイボスティ。
義母の畑の柿の実を収穫する。長浜の叔母さん叔父さん、それに義姉も加わって、女房と五人で二十キロの袋を二つ分。伸び放題だった棕櫚の枝も刈ることができた。ビニール袋に数十個の柿を残して、あとは持って帰ってもらう。
夕方、義母が帰ってきた。住み慣れた家での暮らしがまた始まる。義母に好転の兆しが訪れないかと女房はどこかで期待している。僕だっていくらかは思っている。
夕餉は、叔母さんがくれたサツマイモでレモン煮、クリームシチュー、味噌汁の残り、玄米ご飯、ルイボスティ。義母も同じものをミキサーで。夕食に二時間近くかかる。
永世中立のスイスは、直接民主主義という形を取っている。大きな問題は、国民投票で決める。中立だから他国へ攻め入らないが、攻め込まれたらとことん戦う用意はしている。兵器の開発や軍隊の訓練も怠りなくやる。現実を直視しているというその姿を、他国に知らしめることに躊躇しない。同時に、中立であることは高らかに宣言する。
EUのど真ん中にいながら、EUには加盟しない。通貨の中立性の確保とかもっともらしいことを言う専門家もいるが、EUはそもそも中立ではないからだ。少し前まで国連にさえ加盟していなかった。加盟に際しては、国民投票を行って決めたのはもちろんのことだ。中立という状態にそれほど固執しているのである。自分たちが何を尊んでいるのか、それを他国に示すことで無用な争いを忌避している。スイスにはモラトリアムが存在しない。何事も直視してプラグマティックに決める習慣があるのだ。
この国の進む道について、スイスは望ましい答えの一つを見せてくれている。
脚立に登ってハサミを使っていると、空の青さに顔が歪む。今年は猛烈な寒さが襲ってきそうだ。