額面どおり

晴れのち曇り。
六時に起きる。
朝餉は、レタスとパプリカ、ピーマン、コーン、大豆、マカロニのサラダ、ヒジキ煮、卯の花、コンニャクと大豆の甘辛煮、味噌汁(大根、人参、カボチャ、玉葱、シシトウ、豆腐、油揚げ、小松菜)、トースト、バナナとヨーグルト、抹茶のミルクセーキ、アールグレイ。
女房の出勤日でいつもの弁当を。
入り側書斎でキーを叩く。
洗面所のタオルがない、と女房が言う。
僕は知らないよ、と返事をすると
そうじゃなくって、どこにいっちゃったのかしらっていう意味だよ、とちょっと棘のある声が返ってきた。
タオル掛けにタオルがないと言われると、なんだか責任を感じる。それを逃げようという魂胆がこちらの声にあったんだろう。
男のこういう声音に女は敏感だ。家事全般を軽んじている。そういう声音に通じているんだと思う。
そうやって、瘡蓋のような気持ちが垣間見える。気づかずに過ごしてきた仕事人間の頃、女房はどんな気持ちで家事をやっていたのだろう。
昼餉は、お弁当おかずの残り、マーマレードを塗った食パン、冷たい煎茶、珈琲。
十一キロをジョグ。
稲刈りの終わった田んぼに火が放たれている。秋の匂い。煙の中を走る。
遅い夕餉は、コールスローサラダ、切り干し大根煮、ヒジキ煮、卯の花、味噌汁の残り、玄米ご飯、桃のチューハイ、冷たい煎茶。
いつも人手が足りないグループホームのことを女房が出勤のときにこぼす。
新人さんと女房の二人で夕方までお婆ちゃんたちの面倒を見るということがままある。具合が悪いといって早退する人もいる。渦中の義母たちはもちろんだが、これからそういう所へ行くことになる僕らだって、覚悟しておいた方がいい。聞かされる話しはそういうことばかりだ。
そういえば、敬老の日のお赤飯を女房はどこかで愉しみにしていたらしい。
もち米じゃなかった。
がっかりしている顔が面白いのだが、もちろん黙っていた。白米に小豆を入れたのもお赤飯と言うのかな。女房の気持ちも分かる。
献立表の『お赤飯』という文字を、女房が睨んでいる。