丘の上の礼拝堂

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

晴れ。10度。

7時に起きる。

朝餉は、蜂蜜とヨーグルトをかけたリンゴ、キャベツ・大豆・カニカマ・青さのサラダ、焼いた厚揚げと卵焼き、味噌汁(ネギ・玉葱・人参・キャベツ・油揚げ・豆腐)、バタートースト、アールグレイ。

妻と2時間ほど歩く。湖のそばの武蔵野の眺望が広がる丘の上にその礼拝堂は建っている。

中村拓志さんが設計した建物。二人して見上げ、ガラス越しに中を覗き込む。コロナ禍で中へ入ることができないけれど、その佇まいがこちらへ降り注ぐ。

僕らは墓園の中を散策して、また礼拝堂に戻る。アルカシア建築賞を受賞した建物は複雑な曲線と直線の混淆しているのに、物静かだ。建物の特徴を専門用語で語っても、その静けき佇まいはわからない。建築家の意思が宿っている痕跡を探す。

そんな視線には見えないものが建物には宿っている。それを探すのは徒労だと少ししてから気づく。

電車で降りた乗り換え駅での昼餉は、トラットリアでパスタのランチ、食後に紅茶。

陶磁器店や鞄屋であれこれ眺める。

この国では、好き勝手な場所に自らを葬ることはできない。墓所と認められた土地でなければ罰せられるらしい。樹木葬とはいっても、楠の木の根元にばら撒かれるわけではない。碁盤の目に区切られた小さな地面に埋められるのである。そこにも住所があるのだ。

許されているのは、海への散骨くらいだがそれも専門業者に託さなければいけない。なんにせよ、個人で葬ることは難しい。

夕餉は、磯部巻き、チャイティーラテ。

街の中を歩いて、雑木林を抜けて、幾つもの横断歩道を渡り、クルマに追い立てられ、さまざまな家の姿を眺め、土地の古戦場に立ち止まり、咲き始めた蝋梅の香りを嗅いだ。