おおむね晴れ。32度。
7時に起きる。
朝餉は、キャベツ・ピーマン・玉葱のガーリックソテーを添えた目玉焼きとベーコン、味噌汁(オクラ・ジャガイモ・玉葱・人参・油揚げ・豆腐)、ガーリックバタートースト、ヨーグルトを混ぜたバナナジュース。食後にコーヒー。
若い頃に乗っていた初代と二代目のレンジローバーのことを思い出す。トルクの塊だった4リッターのエンジン。アルミドアを開けて乗り込む際の、コノリーレザーの香しい匂い。フワッと立ち上がる猛禽類のようなエアサスペンション。平原を全周一望できる広大で偽りのないウィンドウ・エリア。
現代のレンジローバーはずいぶんソフィストケートされたけれど、当時のレンジローバーは英国の荒涼とした泥炭地にふさわしい空気を纏っていた。せいぜい2.5リッターどまりの今の4WDがどれくらい心細いものか、僕は乗らなくてもわかる。
レンジローバーに20年近く乗って、開いた口が塞がらないような故障にもあったけれど、体に刻まれたあのクルマの質実は、僕にさまざまなことを教えてくれた。プラクティカルとアイディアルの狭間を往還する柔らかい視点の存在。
あんな芳しいクルマはもう造られないだろうと思う。落日のヒトの世。
ジョギング、9.3キロメートル。
一方で、幼い頃にはじめて知った内燃機関の仕組みが、どれほど絶望的な気持ちを植え付けたことか。揮発させた燃料をシリンダーに送り込んで爆発させる。
えっ? 嘘だろう。そんなダサいやり方でクルマは走るのか。最初に感じたのは、そんな驚きだったと思う。
世界中のクルマが、休むことなく石油をそうやって燃やし続けている。この世は、とてつもなく、だらしないことをやっている――幼い心を暗澹させたのは、救いのなさだった。
なぜ、ヒトはそんな愚かなことを営々と繋いできたのだろう。
どれほど幼なくとも、ヒトは救いのなさがわかる。年齢は問題じゃない、と僕はその時に知ったのだと思う。
ヒトの世は信じるに足るものじゃない。クルマが僕に最初に教えてくれたのは、とても苦いことだった。
妻の作った夕餉は、キャベツのサラダ、チキンカレー、豆乳ジュース。