縁起の声

 

 

 

 

 

 

 

晴れ。18度。

8時に起きる。

朝餉は、きんぴら、卯の花煮、ウインナーソーセージと目玉焼き、味噌汁(玉葱・人参・油揚げ・豆腐・葱)、ご飯。食後にコーヒー。

妻は義姉と菩提寺へ。仏壇や永代経料のことなど。

彦根の本屋へ向かうも、どの道も渋滞で進めず。途中で家に引き返す。彦根の商店街は、ゑびす講だった。

彦根城のお堀道を中型トラックがけっこうな速度でやってくる。道に垂れかかった桜並木の枝を薙ぎ倒して走り去っていった。渋滞でイラつくのはわかるけれど。

動かないクルマのラジオで、今年の元旦に放送された瀬戸内寂聴さんと高橋源一郎さんの電話対談を再放送。

高橋さんがとある文学賞でのエピソードを冒頭に紹介していた。審査員たちの猛烈な反対にあって高橋さんはその文学賞を逃した。審査員の一人だった寂聴さんは、まるで自分が貶されているような気分を味わったと語り、ひとり高橋さんを評価した。その時から高橋さんは文学の世界に己を生み落としてくれた恩人だと思ってきたと。

寂聴さんは、ぜんぜん覚えてないわ、とあの華のあるコロコロした声で笑った。

また寂庵に行きますね、と終わりに高橋さん。美味しいお肉も、お酒もたくさんあるからいらっしゃい、と彼女はまたあの声で笑った。

対談で寂聴さんは高橋さんの声を褒めた。

いま気づいたけど、あなた、いい声ね。その声で、女を口説くんですね。ほんといい声。

そんな褒め言葉もすぐ忘れたに違いない。でも高橋さんはずっと覚えていて、それを励みに口説き落としていくのだろうか。

夕餉は、きんぴら、卯の花煮、餃子、ご飯、ウイスキーオンザロック。食後に柿、ポテトチップス。

寂聴さんは、元旦を寿ぐ対談がラジオだということをずっと頭の片隅に入れておられた。声を気にかけていたことが、再放送で知れる。

もうあの笑い声は聴けない。