蛆虫から天使が

 

曇り、のち晴れ。25度。

7時に起きる。

麦茶、コーヒー。

早春に予約していたLPレコードが自宅に届く。妻が受け取ってくれた。ジャズのリジェンダリー・コレクションはマイルス・デイビス『’Round About Midnight』。B面の1曲目『Bye Bye BlackBird』のために。いつか、ターンテーブルに載せる日が来ることを。

ちょっと大袈裟に言えば、このチューンにおけるこのカルテットの演奏があるとないとでは、人生の趣きがずいぶん変わることだろう。

こうやって、さまざまなthe best of my lifeの鎖が繋がっていく。世界は原体験の吐露に溢れている。ネットがもたらしたオルタナティブなナイーブさの、これは最たるものかもしれない。

その意味するところは、誰かの宝物が私の宝物になる、ということかと思う。

昼餉は、芋けんぴ、メロン、アーリオ・オーリオ・ペペロンチーノ、麦茶、コーヒー。

ジョギング、6.37キロメートル。

もっとも、ネットのはるか以前から、世界はオルタナティブに満ちているのだと民衆が教えてくれる。

たとえば、ヴェネツィア共和国に住んでいたドメニコ・スカンデッラという粉挽き屋の男は、「各人はその職業に従って働く。あるものは身体を動かし骨折って働き、あるものは馬鍬で耕す、そして私はといえば神を冒瀆するのが仕事だ」と異端審問の場で語り、焚刑に処せられている。

この粉挽き屋が、牛乳からチーズができる上がるように、そのチーズから蛆虫が湧くように天使たちが現れたと語ったのは、まさにカオスのことだった。500年前の出来事だ。

僕らは、求めれば得られるところにいて、異端審問で焼かれることはないけれど、処刑は常に姿形を変えて存在していることも忘れてはいけないと思う。

夕餉は、卵サンドイッチ、芋けんぴ、ミルク、メロン。

 

 

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