闇に赤い目

 

降ったり、止んだり、少し日差し。24度。

7時に起きる。

朝餉は、バナナミルクジュース、僕はトーストも。桜餅、コーヒー。

久しぶりの雨。今日からが梅雨だ、と言われても異を唱える人はいないかもしれぬ。

濡れた景色がすべてを沈静する。

癇に障ったのだろうか——植物たちの伸びように、夫婦して叛逆の気概を感じてたじろぐ。僕らが精を出せば、彼らは負けじと茂らせる。こんな矮小な庭で繰り広げられていることは、国中で起きていることの縮図にもなっていないか。

里山に手が入らなくなって、伸び放題の深緑の向こうから野生たちが這い出てくる。飲み込まれた里は、彼らの領分になっていく。

増えすぎた僕らは、じょじょに後退していく。彼らとのあいだに均衡というものがもしあるなら、それを見つける長い試行錯誤の旅は始まって久しい。

僕らは、怯えることからまた覚える。野生との出会いを今一度、思い起こす。

それは克服したり、追いやったりするものではなくて、なによりも、畏敬のものだったのだと。漲る力に触れて、僕らは怯える。

そうだったね、そういえば——と語り合うのだ。

昼餉は、キーマカレーの残り、和生菓子、麦茶。

この国の景色は、これから鬱蒼としていく。分け入ることなど及びもつかない、と気づくまで飲み込まれていく。そして、彼らとの境界などありはしなくて、僕らが彼らの周縁で生きることを許されていたのだと悟らされる。

なんと素晴らしいことだろうと、小躍りしたい気分だけれど、その景色を見る前に僕は土に還るのだろう。交通事故の死者が減少の一途を辿って、その代わりに、イノシシや鹿、猿と遭遇した負傷者数が天気予報の前に報じられる日が来ないとも限らない。

夕餉は、納豆、冷奴、コーンフライ、ベーコンと野菜の中華炒め、味噌汁(玉葱・人参・エノキ・ネギ・油揚げ・豆腐)、ご飯、赤ワイン。食後に抹茶、生なごやん。

妻は、クワイアのリモート会議。

闇に、息を呑む。向こうから、息遣いが伝わってくる。

夜とは、そういうものだったのだと。