忌むべき性癖

 

曇り、のち晴れ。24度。

7時に起きる。

妻と散歩。近所の旧跡を訪ねたり。新田義貞に所縁の神社跡碑を探した。雨後の筍のように広がる新築に飲み込まれたか。欅の雑木林にひっそり隠れているのだろうか。振り返ると、社の消えた跡地に巨大な欅たちがあたりを睥睨している。義貞の騎馬軍団が駆けただろう坂道の木々のトンネルも、消えて久しい。今は、家並みが両側から迫るどこにでもありそうな急坂の一つになってしまった。

朝餉はナスと竹輪のポン酢焼き、キャベツのサラダ、トースト、ミルク、コーヒー。

海外から新型コロナの再拡大が伝えられる。PCR検査を徹底するほどに感染者が増える。喉に付着した微量のウイルスを何十倍かに培養すれば、結果はそうなってしまう気もする。海外の死者数が桁違いなのは、もともと患っていた基礎疾患が主原因という指摘もある。そこには、ウイルスを過大に見ていたことへの訂正の意味も含まれている。なんにせよ、特徴を見極められていないとしたら、そのことが尾を引いている。

だが、これだけは言える。僕らの国は、大騒ぎしているわりに絶望するような状況には一度も陥っていない。生きていればどこかで命を落とすし、いわれのない不運に見舞われることもあるが、このウイルスはことさらに特別なのか。誰もがそのことを考えているのではないか。

それはつまり、このウイルスと生きざるを得ない、僕らがそういう腹を固めはじめたということなのだろうか。

昼餉は、野菜を乗せた塩ラーメン、麦茶。

ペテン師のような性癖を持つ弟を許せない兄は、自分を追って弁護士なった弟に愛想を尽かしている。弟に騙されている周りの人々にその本性を暴いて護ってやりたいのだが、意に反して、弟はみんなに好かれていく一方だ。

兄は本心から訴える。「あいつは、人を騙さずにはいられない。ついやってしまう。どうしようもない男なんです。でも、本来はいい奴なんだ。それに、ありがたいことに怠惰じゃない。それだけは断言できる」

『Better Call Saul』の印象的な場面だが、兄がもっとも忌み嫌う性癖がわかるところでもある。

この台詞に背筋が伸びるような感覚を味わう。己の怠惰を呪わない者などこの世にいないと思うからだ。それでもなお、この言葉が重いのは、兄が常にそれを念頭に生きてきたことを図らずも吐露する結果になっているからである。

夕餉は、冷奴、キュウリ・ワカメ・竹輪・カニカマの酢の物、カボチャと鶏ひき肉のそぼろ煮、味噌汁(人参・玉ねぎ・小松菜・ネギ・豆腐)、玄米ご飯、レモンサワー、麦茶。食後にプリン。