その男、ヴィンス・ギリガン

 

晴れ。10度。

8時に起きる。

朝餉は、バナナとヨーグルト、キャベツ・コーン・パプリカ・大根・竹輪のサラダ、ハムと目玉焼き、味噌汁(大根・人参・玉葱・ジャガイモ・ネギ・エノキ・豆腐)、トースト。食後にコーヒー、チョコレート。

ヴィンス・ギリガン製作のドラマ『Better Call Saul』のシーズン5が今月末から始まる。ちなみに物語はシーズン6まであるという。本家の『Breaking Bad』を超える長尺の物語は、背景にそびえる本家を含めると一大叙事詩と言えるかもしれない。

伏線の回収の仕方が、そのまま物語の陰影に結びついている点において、このドラマは群を抜いている。伏線に使われる小物が大きな役割を演じる。電線にぶら下がったスニーカーとか、クルマのガソリンキャップといった何気ないものが、ドラマをドラマにしていく様は展開の妙である。

詐欺まがいのことを昔馴染みと繰り広げる回など、類稀な短編小説の読後感に似た余韻をもたらすのだが、誰の作風にも通じていないところなど、打ちのめされる爽快感さえある。

昼餉は抜き。

女房は観劇へ。遅くに帰る。

悪に手を染めていく、病を得て死んでいく、立ち向かうために汚れた金を得る、嘘を重ね偽って生きる、矛盾の中で人を殺める――ヴィンス・ギリガンが描く人生は、ままあることの数歩先に待ちかまえている悲劇をちょっと軽く描く。それが、のちのちに重石になって僕らを縛り付ける。

夕餉は、ポークカレー。

悲劇を悲劇として描かない。それは、ちょっとした悲運なのだと言いたげだ。悲劇と悲運の狭間で、僕らは何度も問うことになる。緩慢な悲劇というのが、実は人生を彩っているのではないかと。

ちょこちょこ顔を覗かせる悲運は、その下に蠢く悲劇の瘡蓋のようなものかもしれない。

AppleはOS群の新しいアップデートを開始した。macOSは10.15.4、iOSは13.4のβ1がリリースされている。

ヴィンス・ギリガンが触れる小さい物事は、誰にでも起きる。それが、もたらしている濃い影を前にすると、僕らは声を失う。

 

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