そのままの味

 

晴れのち曇り。12度。

8時に起きる。

昼餉兼用の朝餉は、モスバーガーで。ホットドッグ、コーヒー。カウンターで「スパイシーチリドッグとコーヒー」と言った途端、30年くらい逆行した。スパチリドッグならドリンクはコーラだったが、そこだけ今なのだった。

ドッグを頬張りながら、奥の席に陣取った若いお母さんたちの甲高くて破裂するような笑い声を聞いていた。子供を幼稚園あたりに送った帰りらしい。子供たちよりよほど屈託のない声。少なくとも僕は、この先も発することはない声。

いいんじゃないの、あれくらい。女房が僕の顔を見ながら言う。そういう顔をしていたのだろう。

病み上がりの体で街を歩く。見慣れぬ家、閉めてしまった店、チラシを手渡している若い女の子。僕の疎外感は、住んでいる人々が抱いている気持ちと寸分違わないだろう。屈託のない声とは違って、この気持ちは幾つになっても消え去ろうとはしない。遠すぎて名前もおぼろげな人相の悪い親戚が、向こうから微笑みかけてくるようだ。

夕餉は、竹輪と刻んだ梅漬けのレタスサラダ、鯖の味噌煮、味噌汁(人参、玉ねぎ、かぼちゃ、小松菜、豆腐、ネギ)、ご飯。食後にコーヒーとずんだ餅。