帰宅

曇り。木枯らし一号。
七時に起きる。
朝餉は、キャベツとハム、茹で卵のサラダ、フルーツサラダ、味噌汁(大根、人参、カボチャ、玉葱、油揚げ、エノキ、長葱)、トースト、バナナと蜂蜜、きな粉のミルクセーキアールグレイ。食後にバウムクーヘン
入り側書斎でキーを叩く。寒さではかどらず。
朝から昼にかけて気温が下がる。今秋はじめて、裏ボアのついたズボンを履く。札幌もそうだが、日本海側はこれから鈍色の空が何日も続く。
七キロをジョグ。今秋はじめてウインドブレーカーを羽織る。
夕方、義母が家に帰ってきた。リクライニングができる車椅子に乗って。義姉と姪っ子もやってきて、少しの時間だけ華やぐ。
新しい介護ベッドに横になると、義母はしばらくのあいだ住み慣れた家の天井を眺めていた。
ホームから取ってきた磨り潰された夕食を女房が食べさせる。
何を言っているのか、相変わらずわからない。ただ苛立っているように見える。何かを伝えようとしているのに、僕らは気づかないのだ。義母はその苛立ちを、呻き声のような叫び声のような唸り声のような、そして祈り声のような調子に乗せる。
そそくさと食べることになった夕餉は、白ごまダレの常夜鍋、味噌汁の残り、玄米ご飯。
起こすのも寝かせるのも、要領がわかるまではおっかなびっくりだ。義母の四肢は特に左半身は硬直している。脳溢血か卒中か、昨年のどこかで義母は脳を損傷したのだろう。それ以来の硬直は岩のように固まっている。意味のわからぬ言葉もその大部分は条件反射のような気もする。声は意思とは関係なく出ているのかもしれない。一つひとつの兆候に意味を見いだしたり、一喜一憂している場合でもない。
三人で寝るのは初めてかもしれない。夜半を過ぎて、天井を大きな生き物が駆け回る。帰宅を祝うかのように。