彼女の匂い

 

 

 

 

 

 

曇り、のち晴れ。28度。

7時に起きる。

朝餉は、トマトとチーズのカプレーゼ、ポテトサラダ、バタートースト、ヨーグルトとリンゴジャムをかけたバナナ、豆乳、ザクロ酢ジュース、コーヒー。

ミンゲラ監督の映画『イングリッシュ・ペイシェント』は数年に一度のタイミングで観る。’96年のアカデミー作品賞をとった秀作だが、主演女優賞にノミネートされた人妻役のクリスティン・スコット・トーマスにいつも見入ってしまう。

マイケル・オンダーチェの原作を読む時も、彼女の風貌が常に頭にある。彼女の奥底にあるさまざまな性を堪能できる。恋する女を演じさせると、この人は特有の存在感を醸しだす。どこか普遍性を感じるのは、彼女の中の女性性に彼女自身が忠実だからだろうと思う。演じているのに、滲み出てしまう女性性のことを品性と言ってもいいだろう。

彼女の体から発せられる恋の匂いが、すべての男たちの若かりし日々を彩った女を掘り起こしていく。

オンダーチェが描いた人妻をクリスティン・スコット・トーマスにキャスティングした時点で、この映画は約束されたのだと思う。

夕餉は、巻き寿司と稲荷寿司、ウィスキー・オンザロック。食後にコーヒー、アイスクリーム。

Appleは、macOS 13 Venturaのパブリックベータ・プログラムを更新して、β5をリリースした。開発者バージョンのβ7にあたるもの。Linnのアプリは相変わらず認識されない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

内にあって、動かないこと

 

 

 

 

 

 

 

晴れたり曇ったり。27度。

7時に起きる。

朝餉は、ハムと目玉焼き、リンゴジャムのトースト、ミルク、ザクロ酢のジュース、コーヒー。

少しずつ雲が流れてきて、風が止むと、手の届きそうなところに、鼠色の綿菓子が幾重にも重なっている。雨粒を含んでいる、と直感が訴える。

だから、どうした?

読みかけの本を閉じて、着替える。汗で黄ばんでしまったランニングシャツ、ちょっと厚手のショーツ、たるんだ靴下。緑色のキャップを目深に被る。

降るなら、いつでもどうぞ。

濡れて走る。願ったりだ、と。胸の内で語りかけるのは誰なんだろう?

 

ジョギング、4.02キロメートル。

 

たまの10キロと、ほぼ毎日の3キロ――天秤に懸けるなんて、どうしようもない男だと独りごつ。

走る民の記憶は、どこかに眠ったままだ。

 

この200万年に積み重なってきたこの星のあらゆる出来事が、脚を支えている。

それに比べたら、僕らが創造した神とかいう存在のいかに矮小なことか。

夕餉は、ポテトサラダ、鶏胸肉の唐揚げ、玄米ご飯、ウィスキー・オンザロック。食後にアイスクリーム、コーヒー。

 

『精霊たちの家』より――

「この世に生まれてくる時もそうだけど、死ぬ時も、死がどういうものか分からないから恐ろしいの。だけど、恐怖というのは、現実とはなんの係わりもないもので、心の中のできごとなのよ。生も死も、けっきょくはひとつの変化でしかないのよ」とクラーラはよく言っていた。

 

 

 

 

 

誰が依頼した?

 

 

 

 

 

 

雨、降ったり止んだり。26度。

7時に起きる。

朝餉は、リンゴジャムを塗ったトースト、ミルク、コーヒー。

読売ジャイアンツの黒いユニフォームが見苦しい。デザインしたヨウジ・ヤマモトのシグネチャーがキャップのチームロゴの下とかユニフォームの左上に見える。

今期の限定ユニフォームはどのチームも酷いけれど、これは特にダメだ。ヨウジ・ヤマモトは野球が好きなのだろうか。あのキャップの意匠は、低迷しているチームの現状をうまく表現しているけれど……。

着膨れして腹の出たニンジャがバタバタ走っている。そんな滑稽な姿に見えてしまう。

ジョギング、6.1キロメートル。

BSでヤクルトと阪神の試合を見たのは昨夜だったか。延長線は5時間を超えて、息詰まるような丁々発止が続いた。

一人の日本人選手の活躍見たさに、MLBの下位チームの間伸びした戦いに付き合っていると、野球が嫌いになっていくのがわかる。彼のチームは売りに出そうだという。

夕餉は、ポテトサラダ、鶏胸肉の唐揚げ、味噌汁(小松菜・カボチャ・玉葱・人参・油揚げ・豆腐)、玄米ご飯、ビール、ウィスキー・オンザロック。

Appleは、iOS 16のRCをリリースした。watchOSやtvOSもRCになっている。macOSとiPadOSに開発陣は手こずっている。両OSにとって、互いの連携が今回の目玉だ。さまざまな部分に影響が出ていることは想像に難くない。

 

 

 

 

 

 

 

iPhone 17くらいまで?

 

 

 

 

 

 

曇り、のち雨。28度。

7時に起きる。

朝餉は、厚揚げ・ナス・ピーマンの味噌炒め、味噌汁(シメジ・小松菜・玉葱・人参・油揚げ・豆腐)、卵サンドイッチ、ミルク。食後にコーヒー。

妻はクワイアの稽古のあと、高速バスで名古屋から東海道線を米原へ。

独裁者が仕掛けた戦争は半年が過ぎた。世界最大の原発を占拠した独裁者の軍隊は、そこに打ち込まれるミサイルを非占領者が放ったものだと言う。

そんな酷いことを彼らはやっている、と語る。

あたかも告発者の物言いだ。

不思議なことだが、この時代の独裁者はどこかか弱い顔をしている。テレビに映し出されるその顔からは、権力を掌握している者らしさがなぜか感じられない。それは隣国の共産主義者も同じだ。

どこか困っている、そんな表情さえ浮かんでいる時がある。

昼餉は、塩ラーメン、アイスクリーム。

カルト教団をめぐる報道が加熱して、国葬をやると表明した首相の支持率が大きく下がっている。

教団の金集めは、最高裁判所が違法だと判断を下しているのに、教団自体はまだ宗教法人として活動している。元首相を暗殺した被告は、本懐を遂げつつあるのかもしれない。

夕餉は、野菜とハムの中華炒め、玄米ご飯。

AppleがiPhone 14やAirPod Pro、Watchを発表した。

新製品を定期的にリリースすることに意味などない、とジョナサン・アイブがかつて語っていたが、彼の言葉どおりだったことはあったろうか。売れ残っている数年前のiPhone 12が値ごろになるのを待っている。そんな人が増えている。陳腐なことが起きているのを、今のCEOはどう見ているのだろう。

数年ぶりに発表会を見た。ライブとはいっても、発表は録画だろう。開発した製品のそれぞれの機能を担当した責任者が、その成果を語る。そうやって細分化が進むにつれ、なにかが失われていく。

iPhone 14の先には、iPhone 23が控えているというのかな。その頃でもiPhone 19は販売中なんだろうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

88年前の孤独

 

 

 

 

 

 

 

 

おおむね晴れ。30度。

7時に起きる。

朝餉は、千切りキャベツを添えた目玉焼き、味噌汁(シメジ・小松菜・人参・玉葱・油揚げ・豆腐)、ピザトースト、ザクロ酢ジュース。食後にコーヒー。

妻はバイクを漕いで隣街へ。友人宅で開かれるお茶会に。夕方に戻る。

ジョギング、5.5キロメートル。しばらくぶりの道。新築がちらほら。

 

The Ink Spotsの1940年の歌。「We Three (My Echo, My Shadow and Me)」より――

 

We three, we're all alone

Living in a memory

My echo, my shadow and me

 

We three, we're not a crowd

We're not even company

My echo, my shadow and me

 

What good is the moonlight

The silvery moonlight

That shines above?

 

I walk with my shadow

I talk with my echo

But where is the one I love?

 

We three, we'll wait for you

Even till eternity

My echo, my shadow and me

 

We three, we're all alone

Seem like we living in a memory

That's my echo, my shadow and me

 

We three, we ain't no crowd

Fact is we ain't even company

That's my echo, my shadow and me

 

You know, I've been wonderin'

What good is the moonlight

That silvery moonlight

That shines way, way up above?

 

Yeah, I walk with my shadow

I talk with my echo

But where is that gal that I love?

 

We three, we'll wait for you

Even till eternity

My echo, my shadow and me

 

夕餉は、カボチャ・ナス・トマトの南蛮漬け、カマスのムニエル、味噌汁(ナス・小松菜・油揚げ・豆腐・人参)、玄米ご飯。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

わきまえてほしい

 

 

 

 

 

 

 

 

曇り、のち晴れ。30度。

7時に起きる。

朝餉は、ズッキーニ・ナス・トマトのラタトゥイユ、味噌汁(小松菜・ジャガイモ・人参・玉葱・油揚げ・豆腐)、バタートースト、蜂蜜とヨーグルトを入れたバナナジュース。食後にコーヒー。

バイクを漕いで、理容院へカットに。いつものツーブロック。

サドルを上げた当初より、心なし脚が伸びたような。縮んでいても気づかない。この歳ならありそう。

ジョギング、8.43キロメートル。

 

テレビのニュース解説。グラフとかポイントの箇条書きが大きく映し出される。すると、両脇に立っているアナウンサーが、それを指差す。文章を指でなぞる。指先の形のポインタでぐるぐる強調する。

余計なことを、と思う。なんのための箇条書きなのか。プレゼンテーションの技法くらい学べ、と思う。

ウィンドウ・ペインやストライプのスーツに細かいストライプのシャツを着て、レジメンタル・ネクタイを締めた男のアナウンサー。ヒラヒラの布が肩に付いたウーパールーパー状態のブラウスとか、2回り大きなサイズのシャツを極端に後ろへずらして羽織り、脚が3本くらい入りそうなパンツを履く女のアナウンサー。

信頼を象徴するドレスコードくらい学べ、と思う。基礎も知らない女のスタイリストにスーツやタイを選ばせるな、と思う。

ぱつぱつのパンツとボタンがちぎれそうなスーツの、全身ボンレスハム状態の40代ビジネスマンよ、足元の革靴はそんな魔法使いのようなトーでほんとにいいと思っているのか。

どこかのイタリアかぶれの雑誌がすすめる装いを丸ごとコピーしたようなスタイルが、ほんとにスタイルだと思っているのか。

 

夕餉は、冷奴、切り干し大根、鯖の味噌煮、味噌汁(小松菜・ジャガイモ・油揚げ・豆腐・ワカメ)、玄米ご飯、ウィスキー・オンザロック。食後にアイスクリーム。

君たちの読み上げるニュースが、君たちのせいで胡散臭い。

 

 

 

 

 

 

 

姿勢の違い

 

 

 

 

 

 

 

曇り、夜に雨。29度。

7時に起きる。

朝餉は、林檎ジャムとヨーグルトをかけたバナナとキウィ、味噌汁(ジャガイモ・ワカメ・油揚げ・豆腐・人参・玉葱・キャベツ)、ピザトースト、豆乳。食後にコーヒー。

妻はクワイアの稽古へ。夜に帰る。

NHKの将棋と囲碁トーナメント。

囲碁では、AIが考えた最善手を司会も解説者も尊重するのだが、将棋では概して懐疑的な物言いをする。10手ほど先を考えれば決して悪い手ではないAIの最善種を、即座に否定する。

なぜその手が最善手のなのか。解説者なら、少しは立ち止まって先を読んだらどうだろうと思う。AIと対局しても勝てないことの方が多いのははっきりしているのだから。

柔軟性が違う、と思うことがAIの最善手を画面に映すようになってから多くなった。

昼餉は、妻が作った卵サンドイッチ。

ジョギング、6.2キロメートル。ピッチを上げて走る。

夕餉は、解凍したカレー、ウィスキー・オンザロック。

妻を迎えに傘を持って駅へ。

 

 

 

 

 

 

なんにせよ、息を弾ませ

 

 

 

 

 

 

曇り、日差しあり。27度。

未明にかけて涼しい風が吹く。

7時に起きる。

朝餉は、林檎ジャムとヨーグルトをかけたバナナ、トマトとナチュラルチーズのカプレーゼを添えた目玉焼き、味噌汁(キャベツ・玉葱・人参・しめじ・油揚げ・豆腐)、バタートースト、豆乳。食後にコーヒー。

 

ジョギング、10.31キロメートル。久しぶりにちょっと先まで。少し涼しいくらいで体が軽い。脚が上がる。

 

夕餉は、サツマイモの甘煮、厚揚げの煮物、妻の作った冷やし中華。食後にアイスクリーム、クッキー。

 

 

 

 

 

この星の片隅で……

 

 

 

 

 

 

 

雨。24度。

7時に起きる。

朝餉は、ヨーグルトと林檎ジャムをかけたバナナ、目玉焼きとハム、味噌汁(ワカメ・小松菜・玉葱・人参・油揚げ・豆腐)、バタートースト、ザクロ酢ジュース。食後にコーヒー。

気象庁は、今年の梅雨明けを6月末から7月末に変えると発表した。地球は未曾有の中にあるという、これも例証の一つなのだろうか。

この国は大規模な山林火災を免れている。他国では常態化して火災の規模が大きくなっている。雨は降らないし、気温が下がりにくくなっている。中東やアフリカでは50度という信じられない気温でも暮らしている。

年とともに絶滅する動植物が増えている。この星は数多の種を滅ぼし、都度、新たな種を生み出している。生き物で常に溢れかえっているので、多くなれ過ぎれば自滅する。代わりはすぐ現れる。増えて、減るを繰り返すことにこの星は無頓着だ。増えたのは、増えた側の問題だ。

今、ヒトは減っていく方へ舵を切った。切らされたという表現が妥当だろうか。どこまで減るのか。30億人かもしれないし、1億人以下かもしれない。

数はどうあれ、細々と暮らすことは想像に難くない。

夕餉は、切干大根煮、厚揚げの煮物、サツマイモの甘煮、焼き鮭、味噌汁(玉葱・人参・小松菜・キャベツ・油揚げ)、玄米ご飯、ウィスキー・オンザロック。食後にほうじ茶、クッキー。

 

 

 

 

 

 

 

ドック入り

 

 

 

 

 

 

雨、のち晴れ。30度。

6時に起きる。

妻とバイクを漕いで、健康福祉センターへ。

人間ドック。がん検診はオプションをすべて受ける。

担当のお医者が体調がすぐれないとかで、面談は行われず。コロナかな?

去年もそうだったけれど、受診者が少ないのでどこか長閑な雰囲気が漂う。

昼餉は、センターのレストランで豚ロースの生姜焼き定食を。

ドーナッツ屋でハニーディップとコーヒー。妻とあれこれ話し込む。バリウム用の下剤が気になって、何度もトイレへ。

団子屋でずんだ餅とレモン餅を求める。

夕方、妻は4回目のワクチン接種を受けに。妻はすべてファイザー。

夕餉は、コールスロー、ナス・ピーマン・キャベツ・人参・ベーコンの中華炒め、味噌汁(玉葱・人参・小松菜・油揚げ・豆腐)、玄米ご飯。

 

 

 

 

 

晩夏の灼熱

 

 

 

 

 

 

雨、のち晴れ。32度。

7時に起きる。

朝餉は、リンゴジャムとヨーグルトをかけたバナナ、ズッキーニ・ナス・トマトのラタトゥイユ、味噌汁(小松菜・油揚げ・豆腐・玉葱・人参・キャベツ)、卵サンドイッチ。食後にコーヒー。

妻はクワイアの稽古やシルバーグループのアテンドへ。夜に帰る。

ジョギング、8.18キロメートル。

夕餉は、人参のグラッセ、キャベツ・キュウリ・人参のコールスローを添えた合い挽き肉のチーズハンバーグ、味噌汁(竹輪・小松菜・玉葱・人参・油揚げ・豆腐)、玄米ご飯。

8月の総括をば。アクティビティは9日、総距離は81.47キロメートル。スクワット20回はほぼ毎日。

 

 

 

 

つれづれに

 

 

 

 

 

 

曇り。24度。

7時に起きる。脚を撫でる風、心地良し。

朝餉は、ヨーグルトをかけたブルーベリー、ハム・目玉焼き、味噌汁(カボチャ・オグラ・玉葱・人参・油揚げ・豆腐)、パンケーキ。食後にコーヒー。

パンケーキは、生地の薄力粉に粉砕したオートミールを混ぜるとコクが出る。ピンクソルトをふるとなおいい。溶かしバターはマスト。

スーパーのフードコートで、妻とずんだ餅、レモン餅。

マクドナルドでアイスクリーム、コーヒー。

しばし話し込む。本も少し。

固定電話の子機用充電池を求める。小さいのにバカにならない値段。Amazonで求めたのは1年ももたず充電できなくなった。この類いの充電池はすべて中国製で、だからどれを買っても賭けだ。マイナポイントを使う。

注文しておいた革のブックカバーが届く。四六判の二回りほど大きいサイズ。600頁を超えても大丈夫そう。

耳たぶの少し上を指で押さえると、飛び上がるほど痛いツボがある。調べてもどこかの部位と関連しているふうでもない。そこを引っ張っていると耳が熱くなるだけなのだが……。

妻の作った夕餉は、冷奴、冷やし中華、ビール、ウィスキー・オンザロック。

Appleは、iOS 16のパブリックベータを更新してβ6をリリースした。ビルドは20A5358a。RCが間近になった。

ちなみに、Appleは来月8日に発表会を開く。メディアによれば、iPhoneやWatch、iPod Proの新型なんかをお披露目するらしい。

 

 

 

 

 

 

不信感の出所

 

 

 

 

 

 

曇り、ときどき晴れ。26度。

7時に起きる。

朝餉は、蜂蜜をかけたヨーグルト、味噌汁(カボチャ・人参・玉葱・キャベツ・油揚げ・豆腐)、ピザトースト、バナナ。食後にコーヒー。

幼心に感じた大人への不信感は、内燃機関に限ったことではない。

民主主義という不確かな手続きもそうだった。目指すべき姿形があって、そこへ向かうための共通の認識が大人にはあるのだろうとどこかで思っていた。民主主義は、どうやらその豊かな土壌になっていて、そこに根を張り、大きく枝を茂らせればいいのだと信じていた。

ジョギング、8.08キロメートル。涼しい風。ピッチが伸びる。

 

目指すべきものなどどこにもない。

あるのは手続きだけで、それさえ一票の格差によって満足に守られない。手続きさえ目標に過ぎない。そんなことを知ったのは、小学校に入ってからだったと思う。

手続きの骨格は、あくまで骨格に過ぎない。手続きが生み出した結果は、必ずしも正しいとは限らない。要諦は、手続きのみがあって、結果に対する責任は誰も負わないということだ。

民主主義は底の抜けたザルだ。小学校に入って感じたのは、そんなことだった。

役人も政治家も職業化した時点で、制度としての民主主義は形骸化したのだと思う。

 

夕餉は、納豆、ベーコンとナス・ピーマン・キャベツ・玉葱の中華炒め、焼き鮭、味噌汁(オクラ・人参・玉葱・油揚げ・豆腐・キャベツ)、玄米ご飯、ビール、ウィスキー・オンザロック。食後にコーヒー、クッキー。

 

 

 

 

 

手中にない物理原理の存在

 

 

 

 

 

 

 

雨、のち曇り。23度。

7時に起きる。

朝餉は、キャベツと卵の中華炒め、味噌汁(玉葱・人参・カボチャ・オクラ・油揚げ・豆腐)、フレンチトースト、ヨーグルトのバナナジュース。食後にコーヒー。

NHKの将棋と囲碁トーナメント。どちらの対局も土壇場で逆転。下駄を履くまでわからない、を地で行く。

両対局ともポカがあった。特に囲碁は半目勝負だったのを、結城聡9段が解説途中で「先手は今の手で2目、損をしたと思います」と言ったとおり、結果は2目半差だった。解説者の計算にも脱帽。大石を召し取るのも囲碁の醍醐味だが、半目差で勝つ今日の佐田篤史7段の凄み。

囲碁の半目勝負だけは、ほかにしっくりくる表現が見つからない。一目のその半分の手。それを勝負の最中に計算できる凄み。その緊迫にふさわしい言葉があるだろうか。

 

昨日のクルマの続きを――

幼い心にも、内燃機関のだらしなさはすぐわかった。そんな無駄な消尽をしていれば、早晩しっぺ返しがくることくらい感覚でわかった。そういうことは子どもの方が素早く察知するかもしれない。大人に対する根深い不信感は、すべての子供にある、と僕は思う。ヒトが社会化していくにともなって、それがどう緩和されるのか。それとも、ずっと残り続けるのか。そのあたりのことはわからない。

内燃機関の仕組みを知る以前、動力の原理は超伝導のようなある種の超効率性がしっかりあって、それが司っているのだと思っていた。そういう仕組みを大人は営々と作りあげており、それが社会を動かしている。どこかでそう信じていた。僕もいつの日か、その原理に触れる日が来る。大人になるのは、それを知る日なのだと。

あれほどの速度でクルマが動くのは、それくらいの原理に依っていなければおかしい。そうどこかで信じていた。だから、内燃機関に裏切られた時のショックは大きかった。

レンジローバーに乗り続けたのは、ある種の反骨のようなものだったかもしれない。過酷な大地を走るクルマは、野蛮を克服するある種の野蛮の権化だったわけで、レンジローバーが体現しているのは、そのものずばりだった。

エレガントなカタチを纏った野蛮。

意識してはいなかったけれど、そんなことをあのクルマに投影していたのだと思う。

内燃機関のだらしなさは、僕がもっとも忌み嫌うものとしてあり続けている。クルマの電気化がやっと動き出しているけれど、すべての内燃機関が電気化するために要するエネルギーの経済的置換を想像するだけで気が遠のく。

ヒトが払ったツケは、とてつもなく大きい。

夕餉は、厚揚げとキャベツのサラダ、チキンカレーの残り、ビール、ウィスキー・オンザロック。

涼しい風が吹く。久しぶりに2階のベッドへ。手足を伸ばす。

 

 

 

 

 

 

 

最初に知ったこと

 

 

 

 

 

 

おおむね晴れ。32度。

7時に起きる。

朝餉は、キャベツ・ピーマン・玉葱のガーリックソテーを添えた目玉焼きとベーコン、味噌汁(オクラ・ジャガイモ・玉葱・人参・油揚げ・豆腐)、ガーリックバタートースト、ヨーグルトを混ぜたバナナジュース。食後にコーヒー。

若い頃に乗っていた初代と二代目のレンジローバーのことを思い出す。トルクの塊だった4リッターのエンジン。アルミドアを開けて乗り込む際の、コノリーレザーの香しい匂い。フワッと立ち上がる猛禽類のようなエアサスペンション。平原を全周一望できる広大で偽りのないウィンドウ・エリア。

現代のレンジローバーはずいぶんソフィストケートされたけれど、当時のレンジローバーは英国の荒涼とした泥炭地にふさわしい空気を纏っていた。せいぜい2.5リッターどまりの今の4WDがどれくらい心細いものか、僕は乗らなくてもわかる。

レンジローバーに20年近く乗って、開いた口が塞がらないような故障にもあったけれど、体に刻まれたあのクルマの質実は、僕にさまざまなことを教えてくれた。プラクティカルとアイディアルの狭間を往還する柔らかい視点の存在。

あんな芳しいクルマはもう造られないだろうと思う。落日のヒトの世。

ジョギング、9.3キロメートル。

一方で、幼い頃にはじめて知った内燃機関の仕組みが、どれほど絶望的な気持ちを植え付けたことか。揮発させた燃料をシリンダーに送り込んで爆発させる。

えっ? 嘘だろう。そんなダサいやり方でクルマは走るのか。最初に感じたのは、そんな驚きだったと思う。

世界中のクルマが、休むことなく石油をそうやって燃やし続けている。この世は、とてつもなく、だらしないことをやっている――幼い心を暗澹させたのは、救いのなさだった。

なぜ、ヒトはそんな愚かなことを営々と繋いできたのだろう。

どれほど幼なくとも、ヒトは救いのなさがわかる。年齢は問題じゃない、と僕はその時に知ったのだと思う。

ヒトの世は信じるに足るものじゃない。クルマが僕に最初に教えてくれたのは、とても苦いことだった。

妻の作った夕餉は、キャベツのサラダ、チキンカレー、豆乳ジュース。